短歌の紹介

このページでは、中川佳南がこれまでに作った短歌のうち100首を紹介しちゃいます(^_^)

(短歌の内容は、変更されることがあります。)


001 家出してかけたテレクラ十七の我を包みし四十男

002 オキシフル、潰したカバン、セブンスター、脱ぎ捨てられたルーズソックス

003 暑がりなあなたの汗に触れるとき海が近づく 愛は波音

004 指先に「サビシイ。」という感情を込めて男をぎゅっと抱きたり

005 腰を振る男の汗が目にしみてその必死さに我は驚く

006 別れ際男がくれた万札と使い古しのヴィトンの財布

007 春眠の記憶が残る足指をぱしゃぱしゃ洗い夏を迎える

008 妊娠を知った日山手線に乗りたどり着けない終点思う

009 二十一になりたる我にわが腹は「母」突きつけて宣戦布告

010 取り返しつかないという絶望と希望交差す 二十五週目

011 死にも似ていつか必ず来る「その日」恐れつつ待つ 産むのがこわい

012 わが腹を真っ直ぐ縦に切り裂いて取り出されたり逆子の息子

013 幸福な家族に見えているだろうパチプロ男はにこにことして

014 君以外見舞いてくれる人のなし親に内緒で子どもを産めば

015 産み終えた我に失業告げられずゲーセン通いを君は続ける

016 被害者はむしろ君だと知りながら黙る男を追いつめてゆく

017 わが頬を思いきり打つ腕は盾、口下手男の狂おしき盾

018 首根っこ掴んでGUESS(ゲス)のTシャツをギーと引き裂く男の力

019 「言葉では君に勝てないから殴る」切なきことを男は言えり

020 「ごめんね」と涙ぐまれて揺れている抱きしめられて私が負ける

021 殴られてきつく抱かれて満たされて翼もがれたTUGUMIのごとし

022 義務匂うくちづけでいい唇を重ねあわせる寂しさが華

023 わがために君が作りしシチュー食むこの温もりを失いたくない

024 早春のビルをよぎれば保育園その堀に咲くタンポポの黄

025 「ママ」と呼ぶ子のママとして手をつなぐ朝にひろがるそれぞれの空

026 頬腫らし泣きじゃくる子を自転車のカゴに乗っけて警察へゆく

027 「空きがあってよかったですね」空きがなければ入れないのか女性センター

028 母子加算六五三円を受け取りし日の焼きそばの味

029 東京都児童相談所へ続くジグザグ道のただ中に立つ

030 大学を辞めて子どもを守れとの熱き正義に斬りつけられる

031 学生で母となりたる我を刺す茨の国の刺刺しさよ

032 特例中の特例ですと念を押され緊急避難の措置決定す

033 タンポポに別れ告げむと子別れの四月の風に綿毛を飛ばす

034 快晴にあらざる夏に書いている離婚届に書き得ぬ思い

035 鍵穴に鍵を差し込むその刹那鋭く我の悲しみが来る

036 園庭のカメが息子のお気に入り坂を下ればF乳児院

037 ポケットにキャンディ詰めて発熱の子に会いにゆく 愛されたくて

038 ただの寂しい女なんだよ熱の子を抱きしめ我をぐっと預ける

039 振り捨てた子にすてられて向日葵の黄の爆笑にさらされてゆく

040 今だけは夢見ていたい君のため外されている結婚指輪

041 庇護という安易妬まし炎天にからからと咲く向日葵われは

042 姫と呼ぶ声の優しさ護られた記憶は永久(とわ)にうす紅の雲

043 いま誰のものにもあらぬ指先が葡萄剥くとき紫に染まりゆく

044 手袋を脱いであなたと触れあいぬ一体感のない恋はいや

045 覚悟なき恋ならするな闇に張る薄氷あらば火もて踏むべし

046 ポリネシアンセックスという愛し方男(ひと)抱いて待つ銀のさざ波

047 紛れなく男と思う血管の浮き出た皮膚を撫ででいるとき

048 ガジュマルのような腕(かいな)を首に巻きうしろから聞く声の優しさ

049 奥さんに手紙を書いたその日から君の心は妻に傾く

050 書かずにはいられなかった苦しさを告げれば君の長い沈黙

051 一生涯消えない傷と語りたる妻の言葉も君から聞けり

052 あっさりと謝られたる切なさや朝には消える二人の星座

053 愛された体が溶ける夢を見た花枯れやすき部屋で眠れば

054 うなだれた薔薇と私が通じあういつも誰かに預けたい首

055 まだ家に帰りたくないあと少しずっとこのまま誰だっていい

056 SOSのように真っ赤な傘をさし今日六個目のパン買いにゆく

057 裏道を二人ドライブするような恋をたやすく認めるなかれ

058 鍋底に呟きやまぬものたちの声を煮尽くし火を消す深夜

059「抱かれてもわたしはFree」噛みしめるように歌えばにじみゆく文字

060 真夜中に光るドアノブべたべたに撫で回されて汚れきりたい

061 またひとつ人生を複雑にして蜂飼う耳がぶんぶんうなる

062 四日前に逝かせたる子と夢で逢う今日は甘えるこの子を断たん

063 負けて悔しい花いちもんめお前よりあの子が欲しいと光る蛍(ほうたる)

064 指先で軽んじられている我か君が揉み消す煙草のように

065 一心に鶏卵を剥く指の先ぼろぼろ癒えてゆく我がいる

066 壊れたい体に薔薇のタトゥー彫り失くした愛の記念碑とする

067 男根のオブジェ指差し極彩色のアートあなたが教えてくれた

068 唐突な君の再婚枝ばかりなる森林に迷えるごとし

069 スプーンに張りつく半熟卵の黄 みだらな色だ語れぬ恋は

070 みずうみに言葉沈めて言の葬ひと恋う水を誰も知らない

071 友の名に彼の苗字を合わせれば婚姻完了の音聴こえる

072 君に妻ありし日我は知らざりき君の二度目の妻となる女(ひと)

073 「もう二度と結婚しない」という嘘を飼い犬のごとく信じていたり

074 純愛と横恋慕との境目に√(ルート)的なる雨降りやまぬ

075 「彼が好き」宣言されて夜が明けて一人芝居と決めつけていし

076 雨が好き水玉が好き水っ気の多いわたしが窓辺に溶ける

077 残された種のごとしも我でなく彼女と彼が結ばれしこと

078 忘却の帽子かぶりて人はみな友と彼との再婚祝う

079 七年前の我と彼女が入れ替わる人形劇のごとき結末

080 花嫁となりし彼女の婚姻に招かれざるを無言で笑う

081 ガラスより透き通る意志鋭くも友情というやさしさを切る

082 危険物には近寄らず生きましょう吐息のように君がつぶやく

083 わがためにあなたがついた嘘の数誇ってみてもひとりはひとり

084 紫蘇色の性愛の舌柔らかくとろけた夢の続きが見たい

085 寂しいよ夏の日耳の愛し方教えた人が隣にいない

086 何よりも我は妬めりおそらくは同じ順序で愛された耳

087 産むことのもう無き巣へと引き込まん男根はわが胎で滅せよ

088 赤と黄の花を咲かせる球根に似たり男根共有するは

089 〈かわいそう〉毟り取られたデイジーの花びらの数ほどの想い出

090 新しい恋はいらない今はまだ百合のつぼみを見つめていたい

091 失恋と呼ぶには濁りすぎている水たまりから声が聞こえる

092 含みたる白き錠剤ほろ苦く未練恋々溶けだしている

093 大きなる桜の幹に傷ありて傷持つさくら雨の香りす

094 縁という不思議たとえば途切れてはまた繋がって降るような雨

095 言葉なく散りゆく桜わが恋を忘れた女(ひと)の肩にも落ちよ

096 トマト切る刃の鋭さに冷たさに十字架型の孤独重ねる

097 女売るための仕事に行く夜は武装のごとくアイライン引く

098 職業もプライバシーと告げたくて怒れるジャニスMAXで聴く

099 男たちすり抜けてきてハーブ湯にぽかんと浮かぶ乳房の無邪気

100 春に降る雪つめたくてまぶしくて誰の妻にもなりたくはなし